アスベスト相談室

特別遺族給付金制度の概要

第1 はじめに

アスベスト健康被害を被った場合、国等に対して金銭の給付を請求できる給付金制度があります。このコラムでは、アスベスト健康被害に関する給付金制度の一つである特別遺族給付金について解説します。

第2 特別遺族給付金の概要

1 特別遺族給付金は、アスベスト健康被害を被った労働者などのご遺族であって、労災保険法の規定による遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅した方に対する金銭給付です。

特別遺族給付金は、石綿による健康被害の救済に関する法律(以下、法令名を省略します。)に定められています。

アスベスト健康被害を被った労働者の方は、一般的に、いわゆる労災保険の給付を受けることができます。また、アスベストに関する業務が原因で亡くなられた労働者のご遺族に対しても労災保険(遺族補償年金)の給付がなされる場合があります。

ご遺族が労災保険(遺族補償年金)の給付を請求する場合、時効によって請求権が消滅してしまっていることがあります。請求権が消滅してしまうと、本来受けられる給付を受けられなくなります。そこで、これを防ぐために、特別遺族給付金に関する法律が成立し、ご遺族は特別遺族給付金を請求することができるようになりました。

2 特別遺族給付金は、アスベスト健康被害の特徴を踏まえ制定されました。

アスベスト健康被害には、以下のような特徴があります。

・石綿(アスベスト)へのばく露から30~40年という非常に長い潜伏期間を経て発症すること

・発症から1、2年で死亡に至るケースもあること

・石綿と疾病との関連性に本人も医師も気づきにくいという状況にあったこと

これらを考慮して、上記時効の問題を解決するために、アスベスト健康被害を被った労働者のご遺族の救済を図る目的で制定されました。

第3 特別遺族給付金の給付(支給)要件

1 給付金の種類

特別遺族給付金の種類は以下の二つがあります。

・特別遺族年金

・特別遺族一時金

2 特別遺族年金

⑴ 支給対象者

特別遺族年金の支給対象者は、基本的には以下の要件に該当する方です(60条1項)。

・死亡労働者等の死亡の当時その収入によって生計を維持していた(以下「生計維持要件」といいます。)妻(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)

・生計維持要件を満たす55歳以上の夫(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)

・生計維持要件を満たす55歳以上の父母又は祖父母

・生計維持要件を満たし、18歳に達する以後の最初の3月31日までの間にある子又は孫

・生計維持要件を満たす55歳以上の兄弟姉妹

・生計維持要件を満たし、18歳に達する以後の最初の3月31日までの間にある兄弟姉妹

・生計維持要件を満たすものの、上記に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、一定の障害の状態にあること。

※ただし、一定期間において婚姻や養子、離縁した等の事情がある場合には、受給対象者から外れる場合があります。

上記のいずれかの異なる要件に該当する者が複数いる場合、特別遺族年金を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とされます(60条2項)。例えば、上記に該当する者が配偶者と子がいたとすると、配偶者が特別遺族年金を受け取るべき遺族となり。一方、子は特別遺族年金を受け取るべき遺族に該当しません。

また、上記のいずれかの同じ要件に該当する者が複数いる場合、政令で定められた額を人数で除して得た額とされます。

⑵ その他の支給要件

その他の支給要件は以下のとおりです。

・令和8年3月26日までに亡くなられた労働者のご遺族

・労災保険の遺族補償給付を受ける権利が時効(5年)によって消滅していること

・被災労働者が石綿にばく露する作業に従事したことによって石綿関連疾患に罹患した結果、同原因により死亡したこと

・法律上の請求期限内(令和14年3月27日まで)に請求すること

※現行法(令和4年6月17日改正法成立時点)上の期限です。

⑶ 支給金額

特別遺族年金の支給金額は以下のとおりです(施行令(政令)9条)。なお、支給対象者のいずれかの同じ要件に該当する者が複数いる場合、政令で定められた額を人数で除して得た額とされます(60条3項)。

・1人:240万円/年

・2人:270万円/年

・3人:300万円/年

・4人以上:330万円/年

3 特別遺族一時金

⑴ 支給対象者

特別遺族一時金の支給対象者は以下のとおりです。しかし、上述した特別遺族年金を受けることができる遺族がないときに限り支給されます(62条)。

・配偶者

・生活維持要件を満たす子、父母、孫及び祖父母

・以上に該当しない子、父母、孫及び祖父母並びに兄弟姉妹

上記のいずれかの異なる要件に該当する者が複数いる場合、特別遺族一時金を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とされます

⑵その他の要件

特別遺族一時金のその他の要件は、特別遺族年金のその他の要件と同じなので、該当箇所を参照してください。

⑶支給金額

特別遺族年金支給金額は、基本的には以下のとおりです(施行令(政令)10条)

・1200万円

4 その他

特別遺族給付金は、労災保険により金銭が給付されます。一方、アスベスト健康被害に被った労働者またはそのご遺族は環境再生保全機構に、特別遺族給付金ではない給付金の請求をすることができます。これは、特別遺族給付金と並行して申請することが可能です。しかし、同時に給付金を受け取ることはできません。給付金を二重に受け取ることはできないのです。

第4 結語

上記で解説してきたことからも分かるように、アスベスト健康被害を被った方またはその遺族は、一定の要件で給付金を受け取ることができます。

給付金を受け取る為には国に対し、申請(請求手続き)をしなければなりません。しかし、申請するにも、資料を集め、作成しなければならず、大変な時間と労力を消費してしまいます。そこで、時間や労力を消費しない為、法律の専門家である弁護士に、一度、相談することをお勧めします。

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