アスベスト相談室

アスベスト被害でお亡くなりになられた方の遺族に対する補償

アスベスト被害でお亡くなりになられた方の遺族にはどのような補償があるのでしょうか。

この記事ではアスベスト被害でお亡くなりになられた方のご遺族が受け取れる可能性のある補償について解説します。

1.労災保険

労災保険給付を受給するためには、労働者としてアスベストばく露作業に従事していたことが原因で一定の疾病が発症したことが認められる必要があります。


遺族が受給できる給付は遺族(補償)等給付です。遺族(補償)等給付は遺族(補償)等年金と遺族(補償)等一時金の2種類があります。時効はどちらも被災労働者がなくなった日の翌日から5年で請求権が消滅します。

 
 (1)遺族(補償)等年金

  遺族(補償)等年金は受給資格者のうちの最先順位者に対して支給されます。

  ・受給資格者

   受給権者となる順位は次の通りです。

①妻または60歳以上か一定障害の夫
②18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の子
③60歳以上か一定障害の父母
④18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか一定障害の孫
⑤60歳以上か一定障害の祖父母
⑥18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
⑦55歳以上60歳未満の夫
⑧55歳以上60歳未満の父母
⑨55歳以上60歳未満の祖父母
⑩55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

 ・給付の内容

遺族数遺族(補償)等年金遺族特別支給金(一時金)遺族特別年金
1人給付基礎日額の153日分(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は基礎給付日額の175日分)300万円算定基礎日額の153日分(ただし、その遺族が55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分)
2人給付基礎日額の201日分算定基礎日額の201日分
3人給付基礎日額の223日分算定基礎日額の223日分
4人以上給付基礎日額の245日分算定基礎日額の245日分

(2)遺族(補償)等一時金

 次のいずれかの場合に支給されます。

 ①被災労働者の死亡の当時遺族(補償)等年金を受ける遺族がいない場合

 ②遺族(補償)等年金の受給権者が最後順位者まですべて失権した時、受給権者であった遺族全員に対して支払われた年金の額及び遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合

 
 ・受給権者

遺族(補償)等一時金の受給資格者は次の①~④にあげる遺族でこの内最先順位者が受給権者となります。

①配偶者
②労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母

③その他の子・父母・孫・祖父母

④兄弟姉妹

 ・給付の内容

 ①被災労働者の死亡当時遺族(補償)等年金を受ける遺族がいない場合

遺族(補償)等一時金遺族特別支給金遺族特別一時金
給付基礎日額の1,000日分300万円算定基礎日額の1,000日分

 

②遺族(補償)等年金の受給権者が最後順位者まですべて失権した時、受給権者であった遺族全員に対して支払われた年金の額及び遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合

遺族(補償)等一時金遺族特別支給金遺族特別一時金
給付基礎日額の1,000日分からすでに支給された遺族(補償)等年金等の合計額を差し引いた金額算定基礎日額の1,000日分からすでに支給された遺族特別年金の合計額を差し引いた金額

このほか、葬祭料として、葬儀にかかる費用も支払われます。

支払われる給付金は、31万5,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額ですが、その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分となります。

(参照:遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続/厚生労働省

2.石綿健康被害救済制度

労災保険給付を受給できない場合でもアスベスト被害に遭われた方、もしくはご遺族は石綿による健康被害の救済に関する法律に基づく給付を受けられる可能性があります。この法律は労災給付の対象とならない方(石綿製品の製造工場などの近隣に住んでいた方や石綿にかかわる仕事をしていた方の家族など)や労災保険の対象であったが時効によって給付を受ける権利がなくなった方に対し迅速な救済を図るために制定されました。

石綿健康被害救済制度には、労災保険の対象にならない方のうち、中皮腫や肺がんなど指定疾病療養中の方への医療費や、その遺族への遺族給付を支給する「救済給付」と、時効により労災保険の給付を受けられなくなった労働者の遺族に支給する「特別遺族給付金」の2種類の給付が設けられています。


【救済給付】

救済給付は、日本国内でアスベストを吸入してしまったことによって、肺がんや中皮腫などの「指定疾病」にかかり、現在療養している方の医療費や療養費、また「指定疾病」で亡くなられた方のご遺族に葬祭料や弔慰金などを支給するものです。アスベスト健康被害を受けたものの、労災補償の対象とならない方を救済するために救済給付制度が整備されました。救済給付の支給を申請する場合、独立行政法人環境再生保全機構に対して行います。

給付の種類と給付内容 

  

給付の種類給付内容
医療費医療費の自己負担分を支給
療養手当治療に伴う医療費以外の費用負担に対する給付(月額103,870円)
葬祭料指定疾患に認定された患者の葬祭に伴う費用負担に対する給付(199,000円)
救済給付調整金指定疾病に認定された方が亡くなるまでに給付を受けた医療費と療養手当の合計が特別遺族弔慰金の額に満たない場合に、認定患者の遺族に支給される給付
特別遺族弔慰金指定疾病が原因で亡くなった方の遺族に対する給付(2,800,000円)
特別葬祭料指定疾病が原因で死亡した人の葬祭に伴う費用負担(199,000円)



特別遺族弔慰金等を請求できるご遺族は、指定疾病でお亡くなりになった方の① 配偶者、 ② 子、 ③ 父母、 ④ 孫、 ⑤ 祖父母、 ⑥ 兄弟姉妹で、お亡くなりになった当時、生計を同じくしていた方に限ります(①~⑥の順に優先順位があり、優先順位の高いご遺族がいる場合、優先順位の低いご遺族は請求を行うことはできません)。


【特別遺族給付】

特別遺族給付は、石綿により健康被害を受けた労働者などが、労災保険の給付を受ける前に、健康被害により亡くなられた場合、そのご遺族に対して給付金を支給するものです。そして、そのご遺族の中でも、労災の遺族補償給付の支給を受ける権利が時効により消滅したご遺族に対して支給されます。特別遺族給付の支給を申請する場合、労働局や労働監督基準所に対して行います。

特別遺族年金と特別遺族一時金の2種類があり、特別遺族年金の支給対象者がいる場合は特別遺族年金が支給され、特別遺族年金の支給対象者がいない場合に、特別遺族一時金が支給されることになります。

特別遺族年金    原則、年額240万円を支給
特別遺族一時金   1,200万円

※令和4年6月17日に、石綿健康被害救済法が改正され、特別遺族弔慰金・特別葬祭料と特別遺族給付の請求制限が変わり、ともに10年延長されています。

特別遺族弔慰金・特別葬祭料は「指定疾病」のうちどの疾病を発病したかで、具体的請求期限に違いがあります。例えば、中皮腫・肺がんの場合、平成18年3月27日より前に亡くなられた方のご遺族は、令和14年3月27日です。著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺・びまん性胸膜肥厚の場合、平成22年7月1日より前に亡くなられたご遺族は、令和18年7月1日となります。

※参考:アスベスト(石綿)による健康被害救済給付の概要|独立行政法人環境再生保全機構石綿健康被害救済法が改正されました|厚生労働省

3.工場型アスベスト訴訟による賠償金

アスベスト工場で働いていたことが原因でアスベスト被害にあった労働者のご遺族は国に訴訟を提起し、裁判上の和解を成立させることによって賠償金を受け取ることができます。


和解要件は以下のとおりです。

①昭和33年5月26日から昭和46年4月28日の間に、局所排気装置を設置すべきだったアスベスト工場内において、アスベスト粉じんにばく露する作業に従事したこと

②①の結果、アスベストによる一定の健康被害を被ったこと

③提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること

和解によって国から支払われる賠償金額は最大1,300万円です。


4.建設型アスベスト給付金

アスベスト含有建材を用いて建設作業に従事していた労働者のご遺族については、支給要件を満たすことによって給付金を受給することができます。


和解要件は以下の通りです。

①1975年10月1日~2004年までの間に屋内での石綿吹付作業に係る業務に従事していたこと(吹付け作業業務は1972年10月1日~1975年9月30日までの間)

②上記期間のアスベストへのばく露によって、中皮腫、肺がん、石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などの健康被害を受けたこと

③健康被害についての損害賠償請求権が時効にかかっていないこと

国から給付される金額は最大1,300万円です。

【まとめ】

アスベスト被害でお亡くなりになられた方のご遺族にも補償が受け取れる可能性があります。請求期限もあるため該当する可能性のある方はお早めに相談することをお勧めします。

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