アスベストによる健康被害~胸膜プラーク~ ~ショートコラム⑪~
胸膜プラークとは、胸壁の外側の胸膜(壁側胸膜)の一部に生じた繊維性の肥厚のことです。胸膜プラークは、びまん性胸膜肥厚と同じ繊維性の肥厚です。しかし、びまん性胸膜肥厚は臓側胸膜が線維化し、病変が壁側胸膜にも及ぶのに対し、胸膜プラークは壁側胸膜の病変です。
また、びまん性胸膜肥厚は臓側胸膜と壁側胸膜が癒着している状態が多くみられるのに対し、胸膜プラークは臓側胸膜との癒着はありません。
現在わが国では、アスベスト以外には胸膜プラークが形成される原因はないと考えられています。
そのため、胸膜プラークが存在している場合は、過去にアスベストにばく露したことがあることを示しています。
胸膜プラークは、アスベストばく露開始から10年未満では発生しませんが15~30年を経て出現します。
ばく露開始から20年を経過すると一部が石灰化する場合もあります。
アスベストにばく露している量が多いほど胸膜プラークの発生率が高いことが報告されています。また、低濃度のばく露でも胸膜プラークの発生が認められます。
胸膜プラークは一般的には自覚症状がありません。
胸膜プラークのみでは肺機能の低下や症状はおこらないといわれています。石灰化が進行しても著しい肺機能障害をもたらすことはないといわれています。
しかし、肺がんや中皮腫に患っている方で一定割合の方が胸膜プラークを合併していると報告されています。そのため、定期的に経過を見ることが大切です。