アスベスト相談室

アスベスト 2022法改正のポイント

アスベスト 2022法改正のポイント
 アスベストは、繊維が極めて細いため、工事の作業などを行うと飛散しやすく、知らず知らずのうちに周囲にいる人がアスベストを吸入してしまうリスクがあります。
 アスベストの繊維が肺の中に入り込むことで、肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫の原因になり、肺がんを引き起こすなど健康に大きな被害を与えることがあります。
アスベストによる健康被害はすぐに生じるのではなく、長い年月を経てから現れるケースが多いのです。
 たとえば、中皮腫は吸い込んでから平均して35年前後もの長い潜伏期間があります。
 アスベストは、健康への影響が知られていない時代に建築現場などで用いられていました。
 そのため、特に防御をすることなく作業し、吸い込んでしまっている方がいます。
仕事を定年退職してからだいぶ時間が経ってから、アスベストが原因の肺の病気にかかり、命を落とす方も少なくありません。
 現在は建設時に用いることは禁止されていますが、過去に建てられた建物を解体する際や増改築・リフォームをする際にアスベストが飛散するおそれがあります。
そのため、これらの作業に関わる方、その建物の住民や周囲の人が吸い込まないように慎重な対応をとらなくてはなりません。

2022年アスベスト法改正の概要
1 規制対象の拡大
   従来の規制対象であった吹き付け石綿と、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材に加えて、スレートボード、ビニル床タイル等の石綿含有成形板等
  石綿含有仕上塗材が特定建築材料として規制対象になりました。
2 アスベスト調査の義務化
   床面積合計80平方メートルなど一定規模以上の建築物の解体工事や改修工事をする場合には、石綿含有建材の有無にかかわらず、アスベストの事前調査を行うことが義務化されます。
   事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者等が行わなくてはなりません。
   事前調査の結果は、電子システムで報告することが求められます。
  また、調査結果の記録は、3年間保存しなくてはなりません。
3 直接罰の新設
   アスベスト含有建材等の除去作業などにおいて、隔離などの適切な措置を行わずに除去作業を行った場合に、直接罰が新設されました。
アスベストの飛散防止を徹底させるためです。
 吹き付けアスベストやアスベストを含有する断熱材・保温材・耐火被覆材の除去を改正法で定める方法に即して行わなかった場合には、3月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科されます。
 元請業者や自主施工者だけでなく、下請負人についても作業法の遵守義務が発生します。
 アスベスト調査の流れ
 事前調査とは、工事を行う前に、建物に使われている建材にアスベストが含有されていないか調査することです。
 調査方針は、アスベストが含有されていないという証明を行うことからスタートします。
 その証明ができない限り、分析調査を行って明らかにするか、アスベストが含まれているとみなして、改正法に定める方法に則り、慎重な作業対応を行わなくてはなりません。
 アスベスト調査の流れは以下の通りです。
➀書面を用いた一次調査
 書面調査は、その建物が建てられることや改修された過去の情報の調査から始まります。
 建設時の図面など探して確認することや工事に携わった人へのヒアリングなどを行わなくてはなりません。
 収集した情報や建築物に使用されている個々の建材を把握して、アスベストが含有されているかの仮判定を行います。
 書面調査と仮判定を行うには、建築や建材などに関し、過去に使用されていたものも含め、豊富な専門知識や経験が要求されます。
②現地調査
 書面調査で建物の図面や使用されている建材を把握したうえで、現地で目視による調査を実施します。
 書面調査も目視調査も、共に欠かせない調査です。
 書面調査をしておくことで、目視調査での調査漏れや見逃しを防げます。
また、現地で実際に目視調査を行うことで、図面とは違う建材が使われていたなどの実態に気づくことができます。
③第三者分析機関による建材分析調査
 調査の結果、アスベストの含有が明らかな場合は、適切な方法に則り、作業を行わなくてはなりません。
 不明な場合は、厚生労働大臣が定める第三者分析機関による建材分析調査分析を行うことが必要です。
 ただし、アスベストが含有するとみなして、改正法に則った方法で作業をする場合には分析調査の依頼は必須ではありません。
④報告書の作成・報告
 事前調査を実施した者は、書面調査、目視調査時の現場メモ、みなしや分析調査を行った場合はその結果も含めて、事前調査の記録を作成します。
事前調査結果は、都道府県知事等へ報告が義務付けられるほか、デジタル庁が発行するGビズIDを取得したうえで、石綿事前調査結果報告システムを使って報告することが必要です。
 また、大気汚染防止法の規定にもとづき、工事の発注者に対しても、書面で報告しなくてはなりません。

その他アスベストに関する法規定
アスベストは吸い込むと健康被害が起きるので、吸い込まないようにすること、飛び散らないようにすることが重要になります。
1 建築基準法
   アスベストによる健康被害を防止するため、2006年10月1日以降に着工する建築物では、アスベストの飛散リスクがある建材の使用が禁止されました。
   また、増改築時にアスベストを含有する建材が見つかった際には、適切な方法で除去することが義務付けられています。
   建物の老朽化や建材の損傷、腐食、劣化が進み、そのまま放置すれアスベストの飛散リスクがある場合には、行政官庁が勧告や命令を発したり報告聴取や立入検査を実施したりすることが可能です。
2 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
   アスベスト廃棄物の処理を産業廃棄物の処理業の許可を受けた業者に委託する排出事業者は、アスベスト廃棄物であることを明示して委託し、かつ、処理が適正になされたことを確認しなくてはなりません。
   排出事業者は廃棄物が運搬されるまで、アスベストの飛散を防止するために湿潤化させるなどの措置を行い、強度の高いプラスチック袋で二重に梱包するか、頑丈な容器に密封し、アスベストが入っていることを明示して保管しなくてはなりません。
   万が一、保管中や運搬中にプラスチック袋の破損などによりアスベストの飛散リスクが生じた場合には、速やかに散水するか、覆いをかけるなどの飛散防止措置を講じることが必要です。
   アスベスト廃棄物の運搬時は運搬車両の荷台に覆いをかけ、最終処分場内で一定の場所を定めて、深さが2m以上の場所へ埋めることが求められます。
   最終処分場の管理者はアスベスト廃棄物の数量と埋め立てた位置を帳簿に記載し、保存しなくてはなりません。
3 建設リサイクル法
  建設リサイクル法にもとづく建設工事の届け出をする前に、事前調査を実施することが求められます。
   吹き付けアスベストやアスベスト含有資材の有無についても調査し、使用されていることがわかった場合には、届出書に調査結果と事前措置を講じたことなどの記載をしなくてはなりません。
   解体工事の際も事前措置を適正に実施し、分別解体を行う場合は、アスベスト関連法令にもとづき各種届け出を行い、適正に処理することが必要です。
4 労働安全衛生法
   解体現場や改修現場などで、アスベスト粉塵が発散する屋内作業現場では、粉塵の発散源を密閉する設備と局所排気装置もしくはプッシュプル型換気装置を設けなくてはなりません。
   労働者の安全や周囲の安全を守るために、石綿作業主任者を選任したうえで、各種法令にもとづき、作業方法の決定や労働者の指揮などを行うことが求められます。
   アスベスト建材を切断、穿孔、研磨作業をする場合
  労働者が粉塵を浴びないよう、防護するための呼吸用保護具や保護衣を着用させることが必要です。
   また、粉塵の飛散を防止するため、アスベスト建材を湿潤な状態にしてから作業にとりかかります。
 屋内作業場
 半年に一度、空気中のアスベスト濃度を測定し、作業環境の状態を評価、改善することが求められます。
 測定の記録は、30年間保存することが必要です。
 アスベスト関連作業に常時従事する労働者に対して
 6ヶ月ごとに1回の頻度で、特殊健康診断を実施しなくてはなりません。
 万が一の場合に、作業の記録を振り返ることができるよう、1ヶ月を超えない期間ごとに作業の記録を作成する必要があります。
 健診の記録と作業の記録はいずれも30年間の保存が必要です。
【まとめ】
 アスベストは肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫、肺がんなどの健康被害を引き起こすことから、過去に使用されたアスベストが含まれる建物等を解体、改修などする際は、適切な方法で行わなくてはなりません。
 2022年アスベスト法改正により、規制対象が拡大され、アスベスト事前調査の義務化、適切な方法で作業しなかった場合の直接罰の新設がなされました。
アスベスト調査、書面を用いた一次調査→現地調査→第三者分析機関による建材分析調査→報告書の作成・報告です。
 また、アスベストに関する法規定として、建築基準法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、建設リサイクル法、労働安全衛生法による規制も遵守する必要があります。

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