事例05|ホテルのボイラー係が建物に吹き付けられたアスベストに被爆した事例
- 判決
- 札幌高裁平成20年8月29日判決・労働判例972号19頁
- 事案
- ホテルの機械室・ボイラー室等で、昭和39年4月頃から、設備係の従業員として業務に従事していたAが、平成13年4月ころ、体調が悪化し、翌年4月に悪性胸膜中皮腫によつて死亡したのは、ホテルが作業場の排気等の粉じん対策を怠ったためであるとして、Aの相続人らが安全配慮義務違反を理由とする債務不履行または不法行為に基づいて、合計4,500万円の損害賠償を請求した事案
- 労災認定
- あり
- 認容額
- 3,300万円
判断
安全配慮義務違反の点について、本判決は、ホテルは、特定化学物質等障害予防規則にいう「使用者」及び労働安全衛生法の「事業者」に該当するのであるから、零細事業者であったとしても、関連法令上要求された措置を講じる義務があり、ホテルの安全配慮義務違反が認められるとして、原判決と異なる判断をしました。
なお、過失相殺の主張については、労働安全衛生に関する知識を有し、労働安全衛生を確保する職務を行う者を養成、配置してこなかったこと自体がYの安全配慮義務違反を構成するものであるとして、Aの過失を否定しました。
コメント
札幌地裁平成19年3月2日判決の控訴審判決です。ホテルの安全配慮義務違反について、既に安衛法や特化則の規制がなされており、その事業者に同ホテルも該当するのであるから、零細事業者であっても、法令で要請される措置を講じなくてもよいというものではない、としてホテル側の責任を認め、3,300万円を認容したものです。
本件ホテルの機械室等に吹き付けられていた石綿は、劣化および損傷により飛散し得る状況にあり、10階天井裏の壁面の石綿も飛散し得る状況にあり、そこに長年勤務していたことを踏まえ、上記法令の整備状況に照らし、安全配慮義務違反を認めました。