事例03|石油コンビナートの補修、保温工事等の現場で石綿粉じんに暴露した事例
- 判決
- 東京高裁平成17年4月27日判決・労働判例897号19頁
- 事案
- 石油コンビナートの補修、保湿工事現場で15年間現場監督に従事した男性が悪性胸膜中皮腫により死亡しました。
- 労災認定
- あり
- 認容額
- 約4,678万円(一審を減額)
判断
使用者である会社は、現場監督である男性に対し、石綿の人の生命・健康に対する危険性について教育の徹底を図るとともに、男性に対しても防じんマスクを支給し、マスク着用の必要性について十分な安全教育を行うとともに、石綿粉じんの発生する現場で工事の進行管理、職人に対する指示等を行う場合にはマスクの着用を義務づけるなどの注意義務があったというべきであるとしました。
また、会社は、職人に対しては、防じんマスクを支給していたものの、同じ作業場で工事の進行管理、職人に対する指示等を行うため、職人と同程度あるいはそれに近い程度に粉じんを吸入する可能性もある男性ら現場監督に対し、マスクを支給せず、また、そもそも、石綿の人の生命・健康に対する危険性についての教育や、マスク着用のための安全教育を全く実施せず、さらに、補修工事の対象となる建物について、石綿等が使用されている箇所等を事前に把握するなどの措置を全く講じていないとしました。
コメント
本判決は、東京地裁平成16年9月16日判決の控訴審判決です。
本判決は、一審の判断を引用し、悪性中皮腫を発症して死亡したことについては、高度の蓋然性が認められ、男性が会社に勤務中に現場監督業務に従事した際、石綿にばく露したこととの間には、因果関係があると認めることができるとしました。
付加した判断として、会社が男性ら現場監督に対し、マスクを支給せず、また、そもそも、石綿の人の生命・健康に対する危険性についての教育や、マスク着用のための安全教育を全く実施せず、さらに、補修工事の対象となる建物について、石綿等が使用されている箇所等を事前に把握するなどの措置を全く講じていないのは、労働契約上の安全配慮義務違反であるとしました。
なお、損害賠償額について、亡Aの死亡慰謝料を、1,500万円(一審2,300万円)としたほか、弁護士費用も減額したうえで、Y1に対し総額4,677万円余の支払いを命じています。